MtFが身体を女性化するためには、男性ホルモンを減らし、女性ホルモンを増やし、ホルモンバランスを女性に近づけます。そのために、女性ホルモンを採ります。

性同一性障害に詳しくない病院では、その人の体質や状態にかかわらず一定量の投与をしていることがあります。これでは、人によっては効果がでなかったり、副作用が強く出たりします。一方で、ガイドラインにのっとらないで個人で女性化を進めるニューハーフの場合は、早く女性化しないかとのあせりや、効果への期待から過剰投与になりがちです。

女性ホルモンは少ないと、効果が期待できませんし、多すぎると副作用が強くでます。したがって、その人にあった適切な量を使うことが大切です。

ホルモン治療に先進的な病院では、定期的に血中のホルモンバランスを検査して、ホルモンの投与量を決める方法がとられています。その人にあった量の女性ホルモンを使うことで、効果的かつ安全に女性化を進めることができます。

このページでは、近くに性同一性障害(MtF)の治療に詳しい病院がない、個人輸入の薬などを使って自己判断で女性化を進める方向けに、具体的にどうしたらいいのか説明します。

エストラジオール(E2)単独の使用がおすすめ

女性ホルモン(エストロゲンには)いくつかの種類があります。効果測定のしやすさから、おすすめはエストラジオール(E2)系です。

自己判断での女性化によく使われているのが、プレマリンに代表される結合型エストロゲン(E1)です。ほかにも、強力な作用のエチニルエストラジオール(EE)が使われることもあります。国内のガイドラインにのっとった病院では、プロギノンデポーやペラニンデポー、オバホルモンデポーなど、エストラジオール(E2)の筋肉注射が一般的に行われています。

このようにエストロゲンにもさまざまな種類がありますが、血液中の女性ホルモン検査では主にE2を測定するため、そのほかのものでは数値に反映されない可能性があり、少ないのか多いのかの判断がつきません。したがって、できればエストラジオール系(E2)単独で使ったほうがいいです。

具体的に何を使えばいいか

海外の論文で紹介されている薬剤と使用量の例を参考にしました。この表を一部改変して、代表的な国内での処方薬と海外の処方薬の項目を加えたものが次の表です。

自己判断での女性化でも、効果や副作用を考えると、筋肉注射がおすすめですが、筋肉注射が病院でしか打つことができません。都市部では、ニューハーフのお姉さん御用達のクリニック(美容外科、産婦人科、個人医院)があって、性同一性障害の診断がなくても自己責任で打ってもらうことができますが、地方では難しいかもしれません。

そこで、入手しやすい経口薬(錠剤)や経皮薬(貼付薬やジェル)を使います。

服用が簡単なのは錠剤です。プロギノバという錠剤が個人輸入で入手可能です。これを1日に最大3錠くらい飲みます。少量(1錠)から初めて、血中のホルモンを測って、飲む量を調節してください。※血中ホルモンの測り方はこのページの下のほうで説明します。※個人輸入については、こちらの記事もご覧ください。

 

1錠でも多かったり、微妙に調節したい場合、錠剤をピルカッターなどで割って使います。普通の病気で処方される薬は、そのまま1錠飲むのが普通なので、慣れるまで大変かもしれません。

錠剤のほかにも貼付け薬(クリマラ100 7.6mg)などがあります。これは、週に何回か張ります。錠剤のように毎日使わなくいいので、便利です。量の調節は、パッチをはさみできります。

これも、少量から初めて、ホルモン値を測りながら、増やすなり減らすなりしてください。

先ほどの文献には出てきませんでしたが、身体に塗るジェル剤もあります。国内では、ル・エストロジェル 0.06%が処方されます。

これに似た、海外の薬ではオエストロジェルがあります。

規定の量は付属の定規で測りますが、この量は更年期障害の女性に使う量で、MtFはもっとたくさん使う必要があります。少量(規定量)から初めて、ホルモンを測りながら、増やしたり減らしたりしてください。

血中ホルモンを測る (効果測定)

MtFが身体の女性化を進めるには、男性ホルモンを減らし女性ホルモンを増やす必要があります。どれくらい男性ホルモンや女性ホルモンが血中にあるかは、血液検査で調べます。血液検査は、内科や泌尿器科、産婦人科などで行えます。自己判断での女性化目的での検査は保険が利かないので、実費で男性ホルモンと女性ホルモンあわせて3500~6000円くらいです。

病院の受付で、「血中の総テストステロンとエストラジオール(E2)」を調べてほしいと伝えれば、大体の病院で受け付けてくれます。理由を聞かれたら、性同一性障害の治療で使うためと答えてください。

※総テストステロンは遊離テストステロンではないので注意してください。単に男性ホルモンを調べてくださいというと「遊離テストステロン」を調べらてしまうことがあります。念のために、確認してほうがいいかもです。

男性ホルモンは女性の基準値(55ng/dl以下)に、女性ホルモンは、閉経前の女性の範囲(20 pg/ml~200pg/mlくらい)になっていれば、女性化が進みます。

男性ホルモンが基準値より多かったら、女性ホルモンを増やします。女性ホルモンが上記の基準値より多かったら、女性ホルモンを使う量を減らします。

男性ホルモンを抑えることが、主な目的ですので、男性ホルモン値を下げるのに必要な量の女性ホルモンを使ってください。ただし、あまり女性ホルモンが多くなると副作用が強く出るので、200pg/mlを超えないように注意。

効果測定は、大体3ヶ月に1回くらいの頻度で行ってください。

あと、女性ホルモンは飲んだらすぐ効果が出るものではなく、ある程度の期間(数週間~数ヶ月)一定レベルを保つことで効きます。薬をころころ変えるのではなく、1回薬や飲む量を決めたらある程度その量を続けてください。そして、血液検査をして、調節してください。※目に見えた効果が出ないからといって、増やしたりするのはよくありません。

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参考文献

Wylie C. Hembree, et al. (2009), Endocrine Treatment of Transsexual Persons: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline, J Clin Endocrinol Metab 94: 3132?3154

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