MTF(性同一性障害やニューハーフ)が女性らしくない行動をすると、驚かれるのは女性として見られているからでしょう。ところで、それは元男性であることに気が付かれていないということなのでしょうか? この記事では、読者の方からのご質問にお答えする形で、女性の性役割や「女性らしさ」とパスの関係について、筆者の考えを紹介します。

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相談者:こ**ん さま
相談日:2016年9月14「日

女性の性役割に従わないと変だと思われるMTFがいるようですが、これが完全に男性だと気づかれていない証拠ですか?

パス度の高いMTFトランスが、女性らしくない行動や服装をした(=女性の性役割に従わない) 場合 、周囲の人が違和感を覚えるのは、その人が女性としてみられているからだと思います。
シスジェンダー(トランスでない) 女性が、女性らしくない行動をとった場合も同じような理由から、周囲の人は変に思うでしょう。
この点は、ご質問者さまの考えと同じです。

多くの人は、女性は「女性らしく」行動するものだ信じていますので、その期待が外れると驚きや疑問、嫌悪などに近い感情が喚起されると考えられます。
近年では男女平等、ジェンダーフリーの思想が受け入れられつつありますが、まだまだ「女性は~~である(する)べき」「男性は~~」といったジェンダー規範が根強く残っているのです。

ところで、女性として見られ、女性の性役割が期待されているからといって、元男性であることが完全にバレていないとは限らないと思います。

私たちは、相手の性別をその人の見た目や服装など外見から推測して、その人に「女らしさ」「男らしさ」や性役割を期待しているのではないでしょうか。
本当の性別は、服を脱がせないとわかりませんし、性別適合手術を済ませていれば、服を脱がせてもわからないですよね。

つまり、性役割や「女性(男性)らしさ」にそくした行動は「本来の性別」に対して期待されるのではなく、「このような外見ならば、こういった行動をするだろう」といった、ステレオタイプに基づく予測の一つなのかもしれません。

パス度が高くないMTFであっても、その人が女性の服装をしてメイクしていれば、「女性らしく行動するだろう」と周囲の人は推測するでしょう。
そして、そのMTFが女性らしくない行動をとれば、期待や予測を裏切ることになりますから、シスジェンダー女性やパス度の高いMTFの場合と同じように、違和感を生じさせるでしょう。

こういったことから、「女性の性役割に従わないと(周囲から)変に思われる」ことは、完全に男性だと気づかれていない証拠であるとはいいきれないと思います。

とはいえ、周囲の人から「女性としての役割(性役割)」や「女性らしさ」を期待されているということは、外見上は女性として見えているということです。そういった意味では、「女性らしくない行動をすると驚かれる、変に思われる」ということは、パス※している証拠なのではないでしょうか。

メモ

「パス」「パスする」とは??

※何をもって「パスしている」というかはさまざまな考え方があります。見た目が完全に女性に見え、元男性であることがわからないことがパスであると考える人もいれば、女性として社会生活が送れることがパスであると考える人もいるでしょう。

私は、社会でのパスのほうが重要だと思います。見た目が美人でも、社会(所属する組織や地域、家族などの小社会も含む)に適応できていなければ、意味がありません。自分ひとりの無人島では、性別は関係ないですよね・・・

性同一性障害(MTF)の治療でも、「女性として周囲の人に受け入られれ、女性の性役割で社会生活をおくれること(=女性として適応すること)」を目標にしています。ホルモン療法や性別適合手術は、女性として社会に適応するための手段なのです。

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