女性ホルモン、エストロゲン(卵胞ホルモン)を含む女性ホルモン剤は何種類かあります。血栓症や肝機能障害などのリスクをできるだけ抑えるには、どの女性ホルモン剤(エストロゲン)を選ぶといいのでしょうか。この記事では、天然型エストロゲンと合成エストロゲンの違いや経口と経皮での違いを紹介します。

参考写真:さまざまな女性ホルモン剤
※この記事は、医学的なアドバイスをするものではありません。あくまでも、女性ホルモンの選択に関する管理人の考えを紹介するものです。女性ホルモン剤の選択・使用については、医師の指示にしたがってください。
合成エストロゲンと天然型エストロゲン
女性ホルモン剤には、合成して作られた合成女性ホルモンと、天然の女性ホルモンに近い天然型女性ホルモンがあります。
合成エストロゲンは、ヒトの女性ホルモンに構造が似た物質を合成してつくられます。女性ホルモンは細胞に存在するエストロゲン受容体に結合することで、作用します。女性ホルモンに類似している物質は、このエストロゲン受容体に結合しやすい性質をもつため、女性ホルモンと近い働きをするのです。
合成エストロゲンは強力
合成エストロゲンは、吸収されやすくしたり、肝臓で分解されにくくしたりして、効率的に作用するようにつくられることが多いです。そのため、合成エストロゲンは強力なお薬といわれている物が多いです。例えば、リノラルやプロセキソールなどのエチニルエストラジオール系のホルモン剤やプレマリンやプレモンなどの結合型エストロゲン系のホルモン剤があります。
合成女性ホルモンは強力に作用することが多いです。しかし、合成されて作られているため、本来のヒトの自然な女性ホルモンとは違う物質なのです。そのため、代謝されてできた物質は有害であり、ガンの原因になるなどさまざまな副作用の原因になるという説もいわれています。また、そもそも効率的に吸収するために分解されにくく作られているため、肝臓に負荷がかかります。
天然型エストロゲン(に近いエストロゲン)は副作用がおだやか
一方、天然型エストロゲンは、よりヒトの女性ホルモンに近い構造のエストロゲンです。そのため、体内ではヒトの卵巣で作られる女性ホルモンと同じように代謝されます。そのため、比較的に副作用が少ないです。一方で、女性ホルモン・エストロゲンとしての効果は、比較的穏やかです。
厳密な意味での天然型エストロゲンは、ヒトの卵巣で作られたままの女性ホルモン[エストラジオール]ですので、女性ホルモン剤として製品になったいるものはないと思います。
しかし、天然型エストロゲンに近い、エストロゲンを含む女性ホルモン剤を使うことで、副作用を抑えることができるかもしれません。
天然型エストロゲンに近いホルモン剤としては、オエストロジェル[17β-エストラジオール]やル・エストロジェル(国内承認薬)、クリマラ(パッチ剤)[エストラジオール??]などがあります。
また、注射薬のペラニンデポーやプロギノンデポーも合成されたホルモンですが、代謝されてエストラジオールになり、作用するため、エチニルエストラジオールや結合型エストロゲンよりはヒトの女性ホルモンに近いと言えると思います。
内服薬(経口剤)と外用薬(経皮吸収剤・筋肉注射)
女性ホルモン剤には、一般的な錠剤のように内服する経口剤と、ゲル剤やテープ/パッチ剤、筋肉注射などのように外から吸収するタイプのお薬があります。
内服薬と外用薬・筋肉注射では、外用薬・筋肉注射の方が肝臓にかかる負担が少ないといわれています。
内服薬は、小腸などで吸収され、肝臓をとおってから、全身へ運ばれるそうです。そして、全身で女性ホルモンとして作用し、また肝臓で分解されます。つまり、肝臓を通過する回数が多いのです。
これは、一般的にいわれていることですので、正確な理由はわかりませんが、ホルモン療法に関するいくつかの論文でも、内服薬よりも外用薬の方が肝臓への負荷が小さく、さらに血栓症も起こりにくいという研究結果が紹介されています。
代表的な経皮吸収エストラジオールには、
- ル・エストロジェル [国内承認薬]
- ディビゲル [国内承認薬]
- オエストロジェル?[海外薬]
- フェミエスト [国内承認薬]→販売中止
- エストラーナテープ [国内承認薬]
- クリマラ 50/クリマラフォルテ 100 [海外薬]
などがあります。
リスクからみた女性ホルモンの選び方
リスクを抑えることを再優先したい人は、経皮吸収剤や筋肉注射を選ぶのがいいでしょう。さらに、天然の女性ホルモン・エストロゲンに近い女性ホルモン剤を選ぶと、副作用をおさえられるかもしれません。
もちろん、強力に作用することや手軽に服用できることなど、合成エストロゲンにもメリットはあります。しかし、経口での合成女性ホルモンの服用するのは、副作用の危険性がより大きいのです。
長期的に女性ホルモンを摂るなら・・・
そこで、女性ホルモンを始めたばかりの頃は、強力な合成ホルモンを使用して、ある程度女性ホルモンの効果が見えてきたら、天然型の女性ホルモンや経皮吸収・筋肉注射などに切り替えたほうが、副作用を抑えるためにはいいと思います。
MtFの治療では、女性ホルモンはほとんど生涯にわたって使用することになります。女性ホルモンを長く摂取するので、副作用が気になりますよね。
リスクが高い人は?
また、肝臓が弱っている人や、過去に循環器系に問題がある人、年齢が高い人など、リスクが高いと考えられる人は天然型の女性ホルモン(に近い女性ホルモン)を経皮吸収や筋肉注射で使ったほうがいいかもしれません。
もちろん、血栓症や血栓性静脈炎、脳梗塞、肺塞栓など重大な問題があり、医師から女性ホルモンの服用を止められている人は、服用してはいけません。もちろん重大な問題がない場合でも、女性ホルモンを服用しても大丈夫か医師に相談したほうがいいです。
エストロゲン, プレマリン, 副作用, 女性ホルモン