相談日:2016/12/23(金)
相談者:S様
とある地方に住んでいるという、40代~50代の方からいただいたご相談です。
また、物心ついたころから美しいもの、キラキラしたものや華やかなファッションが好きで、女性の美しさに惹かれたる気持ちが強く、ドラマの内容によりますが、見る時はその中の女性に感情移入して同化したような感覚で見てしまうことが多いです。
性格が優しく繊細なところもあるところが、このように感じさせている部分もあるのかもしれません。その後、このような気持ちや感情は男性ホルモンが強くなってきたこともあると思いますが、中学に入ってからは薄れ、40歳中頃まではパパとして娘二人を育てて男としての慶びも沢山味わい、とても満足しています。次に目覚めるキッカケですが、数年前に職場の後輩が結婚するということで披露宴で出し物をすることになりました。そして役柄として女子高生になって皆で笑わせるということをしたことが基になり、小さな頃の気持ちが蘇ってきて、思わず女の子でいたいという気持ち溢れてきて、ハッキリ気持ちに気付いたかたちになりました。その後、様々なサイトを拝見するなど2年ほど自己分析による整理を続けてきました。現状はそこそこ落ち着いており自己分析がある程度は出来てきているつもりいる状態です。
また、異性に対する感覚については、現状では少なくとも男性に異性を感じることはありません。お尻の穴あたりは感じますからオ○○でも掘られたら興味も湧くかもしれませんが、心情的には女性に近く、S○X対象としては女性しか興味はありません。自分の中の女性的な部分に対する欲求については、何かで埋めないと欠落感・不足感のような感覚が日常的にあるため、現在のところある程度の女性的な身体(肌質や髪の毛、胸)にすることで心のバランスが取れるような感覚があるため、とりあえずの対策ですがサプリメントやホルモン剤を使うことで軽めの女性化を目標でバランスを取っています。
他に下着類は全て女性ものですが、これも腰痛対策もあるのですがバランス対策にもなっています。
また、外に向けては一年に一回程度ですが大きな宴席もあるため、その時は場を盛り上げるということで女装もして都合良く気分転換もしたりしていて、内心解放されるようでその時はとても楽しくしています。
このような私ですが、相談する人も医師もおらずの状態でしたので、メールをさせて頂くことにしました。
現在、娘は二人育ちましたし、あと少しで成人です。
これからのことですが、この先にこの田舎で女性になって生活するつもりは無いのですが、現状の心身バランスを保っていくため軽い女性状態は維持したいと思っています。
ホルモンはオエストロゲル塗布とベルタプラエリア3錠、エストロモン2錠で行っており、胸が少し出来ていて、とても落ち着き、じわーと慶びも感じられて元気が出ます。
エストロモン4錠に増やした時は頭痛が強くなり、ふらつきも強めに感じたので暫く止めましたが、今は少し胸が小さくなり、ムスコは強制的でないと立ちませんでしたが、いくらか元気が戻ってきました。
精神の安定のため少し胸は維持したいのですが、ホルモンも心配です。ずっとホルモンは必要でしょうか?
出来ればホルモンは無しか、少なくして他のものと組み合わせて維持できればと思っております。
HPは拝見して内容も見ておりますが、改めて以上のような状態の私に具体的な助言を頂きたく思います。
(特に飲用物について)
それから、私はMTFのパターンでは無い違うタイプだと思っていますが、細分化すると色々あるようですが何になるのでしょう?
以上、2点について勝手ながら質問をさせて頂きます。
どうか、宜しくお願い致します。
ご質問の回答ができました。お待たせしてしまい、ごめんなさい。
小学生のころ性別に違和感を覚えながらも、そのことについて特に意識することなく、女性とご結婚され、娘さん2人を育ててこられたのですね。そして、職場での余興でやった女装のパフォーマンスが元となって、性に関する違和感を思い出されました。
小学生のころは、性同一性障害やトランスジェンダーという概念があることが一般的には知られていなかったのだと思います。そのため、違和感を感じながらも、親や周囲が「あなたは男の子」というままに、周囲の男性と同じように、成長して、ご結婚されたのではないでしょうか。
ご結婚されていたり、お子さんがいらっしゃるケースでは、当時の時代背景から、意識することなく生活してきて、近年になって性同一性障害についてニュースをはじめとする情報に接して、そうかもしれないと思うということも多いようです。
そして、そのことが原因で精神的なバランスを崩してしまったり、家族や職場との関係が悪くなってしまうというケースも少なくありません。
S様の場合は、ご自身がお書きのように、しっかり自己分析をされて、気持ちを確信された上で、うまくバランスをとり、現状はそこそこ落ち着いているとのことで、少し安心しました。
ところで、ホルモン剤を服用したり、女性ものの下着を着用したりして、心のバランスを保っているいらっしゃるとのことですが、そのことは奥様やご家族はご存知でしょうか。もしそのことが原因で家族との関係が悪くなってしまうことがあれば、心配です。
またもし体の外見がかなり女性らしくなってしまうと、職場での周囲の人との関係も心配です。
とはいえ、S様がしっかりと自己分析をされていて、ご自身でバランスをとって安定されていることから考えると、S様ならうまく調整されて、そこらへんの困難は乗り越えられると思います。
その上で、私なりのアドバイスをさせていただきます。あくまでも私の考えですし、S様の状況や条件を完全に把握しきれていないので、最終的にはご自身でご判断してください。私なんかよりも、しっかりとした考えをお持ちのようなので、その方がいいと思います。
ご家族との関係ですが、いうべき時が来るまでは言わなくてもいいと思います。愛する夫や父が実はそうだったと知るには、ご家族にとってはつらいことかもしれません。もしいうべき時が来たと感じたら、しっかりとご自身の状況を説明された上で、ご家族を愛していること、これからもそれは変わらないことを伝えられるといいですね。
職場では無理にいう必要はないと思います。どんな服装をしようと、どんな体型をしてようと、ご自身の自由なのですから、いう必要はないのです。ホルモンや外科的な手術で体がかなり女性化してくると、周囲の人から指摘されることもあるかもしれませんが、それはS様の望まれることではないと思います。
さて、 前置きが長くなってしまいごめんなさい。いよいよご質問にお答えいたします。
まず、胸を維持したいが、ホルモンを服用することも心配とのことですが、もしそうであればホルモンの量を少なくした上で、定期的に血液検査(肝機能と血液凝固系)をされるとリスク減らすことができます。血液検査はお近くの内科で自費でできると思います。
ホルモンの副作用が心配とのことであれば、バストアップサプリメントやプエラリアやイソフラボンがいいかもしれません。
胸の状態を維持するためには、ホルモンやサプリメントを続ける必要があります。しかし、長く続けると副作用の危険性も高まるので、もしリスクを減らしたいのであれば、 美容外科で豊胸手術を受けることもできます。
また、もし男性的な特徴を抑えたいのであれば、睾丸摘出手術も有効かもしれません。その場合でもある程度の期間は、骨粗鬆症を防ぐ目的で女性ホルモンを摂取する必要があります
いずれの方法にもメリット・デメリットがありますので、ご自身でお調べになって、判断してくださいね。
続いて、ご自身のは「MTFでは無い違うタイプ」とお思いなのですね。そして何に分類されるかとのご質問です。
私は、無理にタイプに当てはめる必要はないと考えています。自分は〇〇だと決めつけて、その〇〇らしくするのは楽なことではないからです。その上で、あえてお答えするとすれば、「MtFのレズビアン」という表現が一番近い気がします。
もう一つは、女装が趣味の男性で女性が好きな人の可能性も考えましたが、「ドラマを見るときは(中略)女性に感情移入して同化したような感覚で見てしまう」と書かれていることなどから、性自認は女性の可能性が高く、「MtFのレズビアン」が一番しっくり来ます。もし自分は女性そのものではないという感じなら「性自認がMtXで性的指向女性」なのかも。これはあくまでも私の分類なので、そう思い込む必要はないと思います。
※MtXのXとはXジェンダーのことです。
以上あまりご質問の回答になっていないかもしれませんが、拙いながら私の考えをお伝えしました。急がず焦らず、時間をかけて様子を見ることをおすすめします。そうすれば、S様持ち前の分析力もあり、自ずと答えが見つかると思います。がんばってくださいね。
※この質問と回答は公開させていただきたいと思っています。一応、お名前と地域名は伏せさせていただきます。もし、ご質問文に公開されると不都合な点がございましたら、お早めにご連絡ください。
長文失礼しました。
これからもよろしくお願いします!
(太字は管理人によります。一部の表現を伏せさせていただきました。)
既婚・子持ちのMTFはありなの?
結婚していて、子どもがいるケースだと、性別移行をするなんてもってのほかという批判をされるケースも多いようです。その批判をしている方々の中には、夫が性別移行をしたことによって騙されたと感じて離婚した妻たち(被害者と自称されています)もいらっしゃいます。
その方々のお気持ちも十分にわかりますが、私は当事者としてケースバイケースだと考えています。確かに、配偶者や子どもに対しての責任も重要なことです。しかし、だからと言って自分を犠牲にして自殺にまで追い込まれるほどまで我慢をする必要があるかというと、そんなことはないと思います。
もちろん、子どもがいる場合は最後まで育て上げるのが両親(父親と母親です)の責任です。結婚をして、子どもを設けてやっぱり自分は女性だったと気が付いたからと言って、親としての責任を放棄すれば、無責任とのそしりは免れないでしょう。
しかし、子どもが成長した後に、あるいは、親としての責任を果たしながら、自分の生き方や幸福を追求することは悪いことなのでしょうか。子どもに与える精神的なダメージを考慮する必要はあると思いますが、性別は人格の根幹であり、人権のなかでも最も大切なことの一つです。
とはいえ、子どもの心理面に与える影響はあるでしょう。例えば、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(いわゆる「特例法」です)では、未成年の子どもがいないことが、性別変更の要件の一つとして挙げられています。この要件は、子どもの心理的な成長を考慮してのことだと思います。未成年かどうか、つまり子供に性別変更の意味が理解できるかどうかを見極め、健全に成長できるようにするのも親の責任なのではないかなと思います。
さて、ご質問者様の場合、冷静に自己分析されていて、文面からも親としての責任をしっかりと果たされていることが伝わってきます。このようなことから、今回はご自身の決断を後押しするような回答をさせていただきました。
状況によっては、ホルモン剤も使われているようですし、やめるようにアドバイスさせていただいたかもしれません。ホルモン剤やサプリメント、手術いずれにも副作用や健康への影響、ミスなどのリスクがあります。また、責任を果たすことができないのに、女性化を始めてしまうと、ご自身だけでなくご家族も不幸です。もしこれを読んでくださっている方で、同じような状況にあられる方がいらっしゃいましても、同じことがあてはまるとは限りません、くれぐれも安易なご判断をなされませんよう、お願いいたします。
続いて、結婚した妻がかわいそうとのご意見もあると思います。ごもっともかもしれません。実際、既婚MTFの多くの方が、罪悪感を持っていらっしゃる、常識的な方です。しかし、その「かわいそう」の背景には、「男性がイエを支える」とか「男性は女性を幸せにする」あるいは「異性婚が当たり前で、同性婚は考えられない」という考えがあるのではないでしょうか。今、男女平等が進む中で、男性が女性を支えるといった価値観は崩壊しつつあります。また、先進国の中では、同性婚は認められてきています。そして、日本でも同性婚について議論されつつあります。このようななかで、一方的な価値観を押し付けるかのような批判をするのは、どうかと思います。
当事者の方も、その利害関係者の方もしっかりと話し合って、お互いにいい方向をさぐっていけるといいですね。
ここまで書いても、既婚MTFへの批判をしたい方はいらっしゃるでしょう。私もそのお気持ちは理解できますが、このサイトは当事者に向けた情報を発信しているサイトです。
当事者でない方で、読んで不愉快になられた方がいらっしゃいましたら、こころよりお詫び申し上げます。そのうえで、もし今後も続けて閲覧される場合は、どうぞ大きなこころをお持ちになってください。
最後になりましたが、素晴らしいご相談をお寄せくださり、ご相談の掲載をお許しくださいました、S様に心より感謝申し上げます。
MTFビアン, 同性愛, 女性ホルモン, 家庭問題, 既婚MTF