性同一性障害についての理解は、昔に比べると広がってきつつあると言えるでしょう。「性同一性障害」に関するニュースや記事もよく目にするようになりました。このようなことから、性同一性障害を知っているという人は多いと思います。

しかし、本当に正しく理解している人は少ないかもしれません。性同一性障害(MTF)を男性なのに女性のように育つ病気と誤解している人もいるらしいです。性同一性障害と見た目は関係あるのでしょうか。

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性同一性障害は見た目で決まるの?!

MTF当事者の間でも、性同一性障害と診断されるためには、女性らしい見た目(服装・しぐさ)で精神科に相談した方がいいとか、見た目が男らしいとなかなか診断されないとかいう都市伝説がまかり通っています。

もし、性同一性障害・性別違和(MTF)の診断が見た目、特に身体の女性らしさだとしたら、おかしいと思いませんか。というのも、性同一性障害は、身体は男性として生まれたのに、自分は女性に属していると感じ、男性らしい身体が受け入れられなかったり、女性として社会生活を送りたいと訴える状態のことをさす疾病名だからです。

性同一性障害MTFは女性らしい人だけ??

身長が高かったり、毛深かったり、ごつかったりする人も、性同一性障害(MTF)になる可能性があります。身長が小さくて、色白で、細い人ばかりがなるわけではありません。また、MTF当事者にとっては、男性としては小さい方でも、普通の女性と比べて少しでも違うと苦痛です。

見た目が女性そのものなら、あまり悩まないのです。心(性自認)が女性なのに、男性らしい身体を持っていることがつらいのですから。

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もし見た目の女性らしさで性同一性障害かどうかが決まるとしたら、それは性同一性障害ではなく、「身体異性化障害」とでもいったほうがいいのかもしれません。

性同一性障害の診断基準にも、どこにも「見た目条件」はありません。身長が高いからとか、年齢が高めだからとか、関係ないんです。とはいっても、女性らしくふるまう努力をした方が、心が女性であると認められやすいの事実です。必ずしも、女性の服装(女装)をする必要はありませんが、しぐさや言葉遣いなどは気をつけましょう。

ここまで、性同一性障害かどうかは、見た目(体つきなど)では決まらないということをお話ししました。あまりにも男性らしい人が、カムアウトすると、「この人が?!」と驚かれてしまうかもしれません。しかし、当事者は、男性らしい体が苦痛でたまらないのに、さらに男性らしい身体をしているということで、かなり悩んでいるのです。もしこの記事を読まれている方で、周囲に性同一性障害の当事者がいたら、そこをわかってあげてくださいね。

身体の条件と性別移行

性同一性障害の診断は見た目では決まりません。しかし、性別移行をして女性として生活するかどうかを決める際には、自身の見た目を考える必要はあるでしょう。

性同一性障害の当事者全員が性別移行をするわけではありません

性同一性障害だからといって、すべての人が性別移行して、女性として生活をするわけではありません。結婚していて子どもがいたり、社会的な立場を考えたりして、元の性別のままで暮らす選択をする人も多いです。

性同一性障害の治療では、性別移行は、生活の質(QOL)の向上が目的です。性別を移行することで、今よりも生活の質が下がってしまうのであれば、そのまま生きていくという選択も合理的といえるでしょう。

身体の条件を考えるのも大切ですが…

その際に、自分の身体で性別移行してどのくらいまで女性らしくなれるか、女性に近づくことができるかを考えることも必要だと思います。残念ながら、今の社会ではまだまだ性別移行者への偏見が残っています。ホルモン療法や手術での身体の変化にも限界がありますから、性別移行をしても身体が男性らしい場合、好奇の目にさらされることになるかもしれません。

かといって、身体的な素質がなかったら絶対に性別移行をするべきではないわけではありません。もし、男性であることが耐えられないで、生活の質に影響が出ているのであれば、少しでも女性に近づくことで楽になるかもしれません。男性のまま生きることの方が、性別移行によって生じることになる困難よりもつらいのであれば、あえて性別移行をするというのも一つの方法でしょう。

MTFが女性として生きやすい時代になってきています

幸いなことに、近年ではLGBT(性的マイノリティ)に対する理解の広がりもあり、数十年前にくらべて格段に生きやすくなっています。また、性別適合手術を受け、条件を満たせば、戸籍上の性別を変更することもできるのです。完全に女性(の身体)になれなくても、治療によってある程度女性らしい身体に近づければ、女性として生活できる可能性はあります。

体つきが男性そのもののような人が、性別変更した場合どうなるの?という批判もあるでしょう。しかし、よく考えてみてください!! 法律上、女性ならば、いくら見た目が男性っぽくても女性なのです。

もし、そのことが原因で不当な扱いを受けた場合は、「外見に対する差別」ですから、人権侵害です(現実には、外見を誹謗されたり、中傷されたりすることはないとはいえません)。

(後記)見た目をバカにするのって…

っていうか、人の見た目をおもしろがって笑うっていうこと自体、非常にあさはかな考えだと思いませんか? 太っている人をわらう。髪の毛の薄い人をわらう。女性なのにゴツイひとをわらう。etc… 子どもならまだしも、いい大人がですよ。でも残念ながら、今の社会はそういう社会なのです。そして、「人と違うと笑われる」「みんなと違うことはいけないこと」と、自分も他人もがんじがらめに縛っている、生きにくい社会なのです。そのような閉塞している社会では、いいアイデアは生まれませんし、いくら能力がある人でもそのパフォーマンスが発揮できないのではないでしょうか。

このようなことから、どんな条件の当事者でも女性として生活できるような社会になったら、性同一性障害の当事者だけではなく、多くの人にとって住みやすい明るい社会になると私は思うのですが、みなさまはどうお考えになるでしょうか。

 

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