今回は、MtF(性同一性障害やニューハーフ)が女子トイレを使う時の基準や気をつけなくてはならないことについてです。MtFが、女子トイレを使っていいかどうかは、非常にグレーですが、多くのMTFが実際に女子トイレを使っています。どのくらいの見た目になったら使えるのかや使う際の注意点などを解説します。
ある程度女性らしくなってくると困るのが、トイレの問題です。
性同一性障害やニューハーフなどのトランス初期の人は、一般的にバリヤフリー・トイレ(多目的トイレ)を使います。しかし、多目的トイレの数は限られているため、使いたいときに開いていないことがあります。事実、ニューハーフの3大聖地※である新宿駅の多目的トイレは、なかなかあいていません。もちろん単純に駅の利用者が多いこともありますが、当事者が多く集まるという、地理的なことも影響しているでしょう。
※ニューハーフの三大聖地=新宿・名古屋・大阪(札幌)。
また、身体障がい者でない人が、多目的トイレを使うのはいかがなものかと考える人もいるため、使いにくいかもしれません。最近では「誰でもトイレ」などと呼ばれることも増えてきた、多目的トイレですが、昔は「身障者用トイレ」という名前でした。
見た目が完全に男性のころは、自分の気持ちさえ許せば、男性用トイレを使うことができますが、女性ホルモンや外科的手術によって、ある程度女性らしくなると、男性を驚かせてしまうかもしれません。また、スカートをはくなど典型的な女性の格好で男性用トイレに入るのは抵抗があると思います。
女子トイレの使用を阻むもの
そこで、女子トイレの使用を考えますが、元男性にとって女子トイレに入るのは、並ならない抵抗があるでしょう。女子トイレに男性が入るのは、法的な規制だけでなく、心理的文化的な規制があるからです。子ども向けのアニメでも、女子トイレに男子が入ることはタブーとされていますよね? 男性は幼い頃から、女子トイレに入ることは「この世の終わり」であるかのように学んできました。
女子トイレは、男性に対して非常に排他的です。男性が入ろうものなら、鋭い視線を集めます。そして、おそらく通報されるかもしれません。
一方、女性が男子トイレに入ることは、法律的な問題は別として、許されてしまいます。異性のトイレに入ることについて、男性に課せられる規範と罰則は、女性に課せられるそれらとは非対称です。これは、覗きや盗撮、痴漢といった犯罪を防ぐためと考えられています。女子トイレが男性に厳しいのは、男性に比べて弱い立場に立ちやすい、女性を守るためなんですね。
あなたは女性?
ここで、女性はずるい! と思っているうちは、女子トイレは使わない方がいいかもしれません。なぜなら、あなたの思考はまだまだ男性だからです。男性の思考を持ったまま女子トイレに入ると、興味や好奇心に満ちた視線などから、不審に思われます。いくら見た目が女性でも、心が男性だったら、絶対に入ってはいけません。
万が一通報され、警察官に事情を訊かれても、そういう人の主張には一貫性がなく、逮捕されかねません。男性が興味本位で女装をして女子トイレに入り、逮捕されたというニュースはよく目にします。第一、男性が女子トイレに入ってきてもらっては困ります。女装をしていても、それは趣味やファッションの一部ですから、多目的トイレを使ってください。
- ここまで読んで後ろめたい気分になったり、文句が言いたくなった方は、下のリンクから退場することをおすすめします。
- また、ここから先は法的事項に関する筆者の私見が含まれています。実際に女子トイレを使う際は、自己責任です。万が一逮捕されても、筆者はいっさい責任を負いかねますのでご了承ください。このことに同意できない場合も退室してください。
自分のことを心のそこから、女性だと思えるようになったら、女子トイレを使うときです。続きをご覧ください!
どのくらい女性に見えれば大丈夫か
元男性とわかるレベルでも、知らない人から声をかけられる際に「おネエさん」と呼びかけられたり、女性として接してもらえるようになれば、大丈夫です。
他にも
- コンビニの会計の際、お金を渡したあとに、店員さんは客層を入力します。その時にピンクのボタンが押されていれば、女性に見られています。
- こちらから何も言わないのに、レディース割引が適用される。
- 街で、女性対象のティッシュなどがもらえる。
- 男性だというと驚かれる
- 男子トイレで驚かれる
といったことが参考になります。
男性として見られることのほうが多いうちは、女子トイレを使わない方がいいです。女性として見られることが、男性として見られることより多くなったら、女子トイレの使用を考えてください。
法律的にはグレーゾーン
ここまで読んで、女子トイレを使うことが余計にこわくなってしまったかもしれませんね。でも大丈夫。近年では心が女性ならだいたいの場合、女子トイレを使っても大きな問題にはなりません。ただし、それなりの女性に見える見た目としぐさなどがあれば、です。また、偏見の少ない都市部のほうが、受け入れられることが多く、地方では難しいかもしれないことを知っておいてください。
性同一性障害MtF当事者が、女子トイレを使うことは以前から議論がありますが、私の認識としては違法ではないと考えています。
※あくまでも法律家でない、私個人の考えなので、女子トイレを使う際は自己責任です。
施設の管理者しだい
実は、男性が女子トイレに入ることを明確に禁止した法律はないんです!! そこで、男性が女子トイレに入った場合、建造物侵入という容疑がかけられます。建造物侵入は刑法130条で定められていて、簡単にいうと「管理人の意志に反して(正当な理由がないのに)、その場所に入る」ことです。通常、施設の管理者は、男性が女子トイレを使うことを許可していませんから、男性が女子トイレに入るとこの条文のもとで罰せられます。
つまり、施設の管理者の許可があれば、合法的に使えます! 勤務先や学校の女子トイレが使いたい場合は、管理者に相談してみてください。もしかすると許可が得られるかもしれません。
※管理者の許可があろうと、管理者自身であろうと、女子トイレの中で覗きなどの痴漢行為をしたら別の法律で罰せられます。
(住居侵入等)
第130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
女性に見えれば使える
ただ、問題が起こるのを恐れて、許可されないケースもありますし、どこかへ行くたびに許可を取ることは不可能です。そこで、あえて相談せず使ってしまい、問題が起こらなかったという既成事実を作ってしまう方法もあります。
あなたが完全に女性に見えれば、仮に管理者がMTFの女子トイレ使用を禁止していても、バレなければ罰しようがありません。
また、完全にパスできていなくても、ある程度女性に見えれば、女子トイレを使うことができます。管理者が男性が入るのは許可していなくても、男性ではないと主張すれば、そのまま逮捕されることはなくなります。すくなくとも事情は聞いてもらえます。きちんと自分のことを説明できれば、大丈夫です。性同一性障害の診断書があれば、かなり心強いです。
※くれぐれも自己責任です。
実際、ある程度女性に見えれば、元男性であることがわかっても追い出されたりはしません。私もトランスの比較的早い段階で女子トイレを使い始めましたが、一度も問いただされたことはないです。はじめの頃はジロジロ見られたりはしましたが…
※くどいようですが、上の説明が通用するのは、女子トイレを正しい目的で使っていた場合です。違法行為をしていた場合は、純女であっても罰せられます。
最終的には状況判断
その施設の客層や地域性も考慮して、寛容でない雰囲気なら、使わないでおいたほうが安全です。多目的トイレを使いましょう。
まとめ:マナーを守った使用を!
女子トイレを使う際は、痴漢的なことをしないのは当然中の当然ですが、その他にもMtFにとって、女子トイレで女性らしくするのは義務だと思っていてください。お世辞にも女性らしいとはいえない行動をする女性(純女)が少なからずいますが、MtFはマネをしてはダメです。「やっぱり男だ!」って言われます。
性同一性障害などが、認知されるようになったため、MtFの女子トイレの使用はおおめに見てもらっているのです。私たちが元男性だとバレていても、見なかったふりをしてくれることが多いです。だからこそ、MtFのイメージを損なう、目に余る行動は慎まなくてはなりません。
中で男性らしさを見せてしまうと、女性に不快感を与えます。
心が女性のあなたなら、女性の気持ちがわかるはずです。
純女以上にマナーを守った使用を心がけましょう!!
実際に女子トイレを使う前に、中がどうなっているか知りたい方は、「女子トイレを知れば怖くない! 性同一性障害と女子トイレ②」をご覧ください。注意点などもありますのでぜひぜひ。
https://joseika.jp/sociallife/joshi-toire2
女性らしさ, 女性文化, 法律